2015年12月22日火曜日

座長をお願いするとき/引き受ける時に必要な事チェックリスト

学会に参加したら突然座長を頼まれる。
そんな経験ありますよね?

しかし、座長というのが何をするものなのかは学会や研究会によって異なります。
気軽に引き受けてしまい、セッションが始まってからしまった! という自体になることがありますので、引き受ける方も頼む方もどんな事があるのかは把握しておくとハッピーな座長経験となるはずです。
以下に項目を挙げていきます。


  1. 発表時間と質疑応答時間を確認
  2. タイムキーパーの有無とやり方を確認
  3. 発表者への説明を行うか否か確認
  4. 発表タイトルおよび発表者の事前確認
  5. 質疑の方式を確認
  6. 登壇者登録システムによみがなを入れリストを作る
まず1、発表時間と質疑応答時間です。
基本中の基本ですが、必ず把握しておく必要があります。
自分が発表しない場合は意外と知らない事がありますので、特に突然引き受ける事になった時や、頼む時には気をつけておきましょう。

次に2。タイムキーパーの有無です。学生さんのボランティアが行っている学会、研究会は多いですがそれに慣れてしまうと「え、自分?」という事がたびたびあります。自分でタイムキープをする場合はベルの有無やベルを鳴らす数、カンペの有無なども確認しましょう。なお、タイムキーパーの有無に関わらず発表者にどう時間を知らせるかは予め発表者と打ち合わせしておきましょう。座長を頼む場合はタイムキーパーの有無や方式などを伝えておきましょう。

3については基本的に座長が行うものと思っていますが、司会と座長が別にいる場合などや学生さんのボランティアが担当して下さるケースがあるため、念のため確認しておきましょう。学生さんなどの場合、同じ事を二度聞かされても言い出せない場合などがあり、発表前の貴重な時間を消費させてしまう危険性があります。

4は主に名前の読み間違い対策です。難読名字でない場合でも、例えばタカダとタカタ、タカハシとタカバシなど感じだけではわからないものがあります。ただ、これらは学会の登録情報にないとWebサイトや英語論文を検索するはめになります。6で示したように、運営側は登録情報に読み仮名をふくめたうえでそれを座長や表彰式に活用すると良いです。

5も基本的な情報ですが、マイクをまわすのかまわさないのか、マイクスタンドがどこか、質問をどのように切るかというのは事前に把握しておく必要があります。ボランティアの学生さんがマイクを持って走ってくれる場合、学生さんたちと事前に相談しておきましょう。

なお、以上のような情報をWebサイトに載せておいて簡単に座長が出来るようにしておくと突然座長を依頼する側にまわっても気が楽です。HCIジャンルの方は特に、研究会などでそういったトライをし、うまくいったら共有してください。



2015年3月9日月曜日

学会などで企業展示を呼ぶ際に必要な事チェックリスト

ここ3年ほど企業所属の研究者として学会に関わっています。
主に

・委員会に所属して学会の運営に関わる
・学会に論文を投稿し、発表する

というアカデミックの人間としての活動をしているわけですが、企業所属の人間として

・学会に協賛する
・学会に出展する

という機会も多々あります。
両方を体験するといろいろ気になるところもあるので、そういった事を列挙しておこうと思います。なお、ここに記述されている以外に何かありましたらコメントに書いていただくか、直接ご連絡下さい。随時追加、修正を行い、学会運営をする際に参照出来るチェックリストとして役に立つものになれば良いと思います。

■参加前に知らせるべき情報

  1. 学会もしくはワークショップの概要
  2. なぜ企業に参加して欲しいか
  3. 企業にとっての参加メリット
  4. 協賛金の価格
  5. プレゼン、LT、展示ブースの有無と展示時間
  6. 協賛した場合の学会参加の扱い(別途参加費が必要か、無料か、割引か)


1〜3はあまり説明される事がありません(私自身が何年も参加している事が多い)が、通常は社内で承認をもらうのにこれをきちんとわかるように説明する必要があります。コピー&ペーストもしくはメールの転送で済む程度に元々説明してあれば、協賛を頼まれた社員が頭を悩ませなくて済むわけです。少なくとも私は社内で協賛を通す時には、それなりに長い文章を書いて送っています。
その手間の話を除いたとしても、担当者がそこに納得出来ていれば、その後の事務的な処理や出張などにも高いモチベーションで臨むことが出来ます。

4〜6は当然と言えば当然なのですが、5と6に関しては抜けが多いです。
なお、ブースを出す場合、ブースに2名必要です。企業にもデモ展示に興味を持って欲しい、と思ったら2名+α人を出さないとデモを見ている時間がなくなります。展示時間は長いほどありがたい……という面もあるけれどもそれだけ長くブースに人が張り付いている必要があるためコストにも直結します。「1日中ブース出していてOKです!」という場合でも主にどのくらいの時間帯に人が来るの知らせたり、コアタイムを作ってあげたりすると良いでしょう。

6に関しては学会によってまちまちですが、協賛しても参加できません、という場合「お金さえ出してくれれば良いです」という強いメッセージを発信していると言っても過言ではないので、明確に他の意図がないのなら気をつけた方が良いです。
また、学会で発表をして企業として協賛をして……という事になった場合に参加登録のサイトがそれに対応しておらず、別なメールアドレスが必要、というケースが時々見られます。パラメータとして、発表者、参加者、協賛企業の3つは別々に持っておくと良いです。

■参加確定後に知らせるべき情報

  1. 入金方法
  2. 入金方法ごとの入金期限
  3. 請求書を出せるかどうか
  4. 請求書が出ない場合、その理由と領収書を出すかどうか
  5. 展示ブースの大きさと椅子の有無、電源の扱いとケーブルタップの有無
  6. プレゼンやLTに使うプロジェクタの解像度と音声を出せるかどうか
  7. 荷物の送り先と受け取れる期間
  8. 終了後に会場に集荷が来るかどうか
  9. ごみの処理について
  10. 参加人数と参加者の氏名を聞いておく
  11. 当日、企業出展者はどこで受付するか
1は当然普通に来るのだけど、2は知らされないケースが多々あります。なお、企業から払い込む場合、締日の次の支払いになるのが一般的であるため、入金して欲しい時期が決まっている場合は出来れば二ヶ月程度前に知らせておきましょう。
3についてですが、請求書を送って処理してもらうと企業側の担当者が非常に楽です。どうしても請求書が出ない、という場合は払い込み後に領収書が出る事は伝えておきましょう。事後に領収書というパターンだと、担当者個人が立て替える事になりがちです。せめて不安を解消するために領収書が出ることは知らせておきましょう。

5は通常教えてもらえますが、椅子が盲点となる事が多いです。特に1日中開いているブースで椅子がないとかなりの疲労になります。用意出来ない、というのは仕方がない事ですが、事前に椅子がないとわかっていればそれなりの対処が出来ます。また、机の大きさだけでなく占有スペースの形状や電源の場所、タップの有無は必須情報です。例えばデモをする場合、机の前に人がいられるスペースがどれだけあるか、という事も重要ですので出来れば会場の見取り図も一緒に欲しいところです。

6の情報はほとんど出て来る事がありません。せめて4:3か16:9かは知りたいところです。また、ソフトウェアのプレゼンをする場合、プロジェクタが1024×768なので表示領域が足りず、デモが出来なかったというケースも実際にあります。学校などの施設を借りると、備え付けの機材が古いなんていうことは日常茶飯事なので予め調べておきましょう。

7はデモの機材搬入などもあるので通常知らせてもらえるのですが、可能な限り早く教えてもらえた方が良いです。特に学会が続けて行われる時期の場合、学会Aから学会Bに荷物を送る、なんて事も発生します。一ヶ月程度前には確定しましょう。
搬入があるからには必ず搬出もあるわけですが、集荷は個別で手配しているなんてことも時々あります。誰かが呼んでいるだろう、と思ったら誰も呼んでいなかったというケースも見たことがあるため油断は出来ません。宅配業者もすぐには対応出来ない事があるので、予め手配しておき、出展者に周知しましょう。業者がわかっていると事前に伝票も準備出来るので非常に楽になります。

9は見落とされがちですが、必要な情報です。ゴミは持ち帰り、という場合でも事前に知らせてもらえれば箱に詰めて送ってしまうなどの対処が可能です。最悪の場合、荷物もすべて送ってしまっており、ビニール袋に詰めたゴミを飛行機や新幹線でハンドキャリーするはめになるわけです。会場で捨てられなくても、有料でゴミを引き取ってもらう事が出来るので、協賛費や出展費用にそこを含めてしまうという手もあります。

10は不思議な事に、参加人数と参加者氏名を聞かれないケースがあります。なぜこれがいけないのかは次項に書きます。

11に関しては通常、受付に行けば良いとわかるわけですが、実際に受付に行くと企業出展者をどう扱うか把握していない、というケースが多いです。特にどこに行けば良いのか書いていないと、こういう時にスタッフの方に聞きながらデモ会場と受付を往復する、みたいな事態になる事があります。

■当日の対処
  1. 受付は円滑に
  2. 名札に企業名と氏名を入れる
  3. 参加企業向けデモツアーをしましょう
1は当然と言えば当然ですが、前項に書いたように企業参加者の受付に関してあやふやな場合があります。協賛企業受付を別に作るか、受付のマニュアルをしっかり作りましょう。
2は前項の10とも関連しますが「企業出展者」としか入っていない名札しかないケースがそれなりにあります。学会参加者の名札を作る場合は所属機関と氏名が入っているのが通常ですが、何故企業だとそれが違うのか、非常に謎です。前項9もこれに関連した話で、そもそも参加者の名前も聞かれないので名札も用意されないわけです。
前述したように、学会は通常のカンファレンスなどに比べるとだいぶ規模が小さい集まりで企業の参加メリットは小さいです。ですから、参加してもらった企業のスタッフには学会の良さ、楽しさを十分に味わってもらい、良き理解者となってその後も活動してもらった方が得です。そんな時に、協賛してもシンポジウムには入れない、名札に名前も書かれない、というような扱いをしたら学会に対するイメージが低下するだけではないでしょうか。

3は提案に過ぎませんが、企業参加者で特に研究文脈ではないところから学会展示などを手伝いに来ている人に対しデモツアーなどしてあげると良いのではないでしょうか。

■企業と研究機関の関係

企業は研究機関にとって、研究のスポンサーであり、学生の就職先であり、場合によっては研究成果を世に送り出すパートナーでもあります。一方、企業にとっていちばん知見を共有出来る相手は競合他社となるわけですが、通常同業他社とそういう場を持つことは難しいです(GDCやCEDECなどは珍しい例ではないかと思います)
しかし、間に学会という場が挟まることによって、同ジャンルを研究し、実践し、知見を積み重ねた人間が所属を気にすることなく議論をする事が可能となる場合があります。
これは、企業の人間にとって大きなメリットとなり得ます。

しかし現状、協賛企業として学会に参加している限りでは、元々そのジャンルの学会に参加し、卒業後に企業に行って戻ってくるなどのケースでないと、なかなか学会という場になじめないのではないかと思います。もちろん、学会はほぼすべてがボランティア運営であり、運営していくだけで手一杯なのはわかっていますが、それを理解してもらうにはもう少し距離を近づける必要がありそうです。

以上、今後の学会運営の参考になれば幸いです。