2013年5月21日火曜日

クマムシは何故放射線に強いのか?

時々テレビなどでも話題になるクマムシだが、私が最初にクマムシの事を詳しく知ったのは慶應義塾大学SFCのORF(オープンリサーチフォーラム)でだった。
クマムシは過酷な環境に強いという事で有名だが、調べてみたところ、いつでも強いというわけではないようだ。

クマムシは乾燥、低温、低酸素状態、高浸透圧などに晒されると無代謝状態に移行する。これをクリプトバイオシスという。特に乾燥によって誘導される乾眠(アンハイドロバイオシス, Anhydrobiosis)状態では、水分の含有量が80%から3%程度まで低下し、絶対零度近い低温から150℃の高温、6000気圧にも耐えるという。驚異的な数字である。

さて、表題にもあるが私が特に不思議と思ったのは人間の1000倍とも言う放射線耐性の話。ORFでは対応してくれたのが学生の方だった事もあり、あまり詳しく聞くことは出来なかった。

まず、何故これが不思議かという事を書かなければならない。

放射線とは物体を通過する際に原子や分子をイオン化させるエネルギーを持った電磁波や粒子線の事を言う。
例えば人体を放射線が通過する際、体内の水分子をイオン化すると活性酸素が出来る。活性酸素は安定した酸素に比べると非常に反応しやすい状態となっているため、体内の組織を急激に酸化させる。これは放射線の生物への間接的影響。
→参考:日本獣医師会放射線診療技師研修支援システム


また、体細胞内のDNAが放射線によって破壊されると、正常な細胞の再生が行われなくなる。特に分裂の早い造血細胞などには深刻な影響を及ぼし、白血病などの症状が発生する事になる。

前者のような活性酸素の問題は、乾眠状態で極端に水分が少なくなる事によって非常に発生しにくくなる。しかし、後者のように直接DNAを壊していくものに対しては、どんな生物と言えども抵抗できないのではないだろうか?

こればかりはさすがに考えてもわからなかったので、検索してみたらそのものずばり、以下のようなサイトが見つかった。
クマムシの放射線耐性 - むしプロ+
非常に面白い内容なので、ここまで読み進める根気のある方は是非上記記事も読んでいただきたい。

意外な事に、クマムシは乾眠状態だけでなく、水和状態でも同等の放射線耐性を備えているという話だ。同様に乾眠状態に入るネムリユスリカやブラインシュリンプ(シーモンキー)は乾眠状態の方が明らかに高い放射線耐性を示すというところから、クマムシの特異性が一掃際だつ。

仮説はいくつかあるものの、何故水和状態でも高い放射線耐性を持つのかという事に関して結論は出ていないようだ。
トレハロース含有量に関係があるのではないかという話も面白い。トレハロースは高い保湿性を持ち化粧品などに含まれている物質である。

上記の内容はもちろん私の専門分野ではなく、当記事の執筆に当たってはほとんどの内容をWeb上で調べたり再確認して書いている。興味を持った方は是非、ご自分でも深く調べて欲しい。
普段あまり生物分野に触れる事がないので、少し調べ始めるといくらでもわからない事が出て来て面白い。

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